新成人に殺された新成人の話

 私は文系大学生の理想像を学問に適度に努めつつ読書に専念することと置いてきました。そしてそれを実行してきました。しかし先日参加した成人式及び、同窓会での出来事でその価値観は見事なまでに崩れ落ちたのです。

 先述しておきたいのが私には中学時代に本来であるはずであった地縁に基づいた深い心からの信頼をもった交友関係がありませんでした。なのに私はその同窓会に参加したのです。当初、心の内側では理想の文系大学生たる行動をしている自分への自尊心に溢れていました。「誇らしい自分を見よ、中学時代に私と友達に成れなかったのが惜しいだろこの戯け者め」という気概で成人式から同窓会へという規定ルートを辿りはじめました。案の定式場には私の中でいう理想的な人間は誰一人として存在しません。我が地元はどれほど悲惨な教育を行ってきたのかと激憤を覚えるような惨状が目の前に広がっていました。式場で酒を鱈腹飲み酩酊している者、中学でのクラスヒエラルキーを維持したまま朋友と交流してしまう者と十人十色です。とりわけ印象的なのが自己主張を重きに置いている新成人の多さです。皆それぞれ自分への自尊心に溢れ、「誇らしい自分をみよ、この戯け者め」という気概で接してきます。そうなのです。あの場は私と同じく自分の理想像を押し付けて優越感に浸る会場なのでした。当初私もそのような会の一員として自尊心の一角に居座ろうと目論んでいたのですが、そうなると何が理想なのかまったく見えなくなってきてしまい遂に私のあれほどまでに高まっていた自尊心が決壊してしまいました。

 

 そんな困惑を抱えながら私は式場を後にして同窓会場に向かいました。そこには多くの人にとっての旧友、私にとっての顔見知りが100人超いました。当然ながら私は孤立しました。そこでその孤独を埋めるために鱈腹酒を飲み泥酔状態になりました。そうするとその状態を面白がって顔見知りどもが酔って寄ってきました。そのような奴らを笑わせるという労働をして、「やっぱお前最高だな笑」とかいう心にもない言葉を頂いた後、私はまた他の顔見知りに声を掛けられていました。そいつは同じ小学校の出身です。要件としては「この後小学校の集まりがあるからお前にも一応声を掛けてやった」というものでした。泥酔した私はとても愚かであったのでその「一応」というメッセージに気が付くこともなく二つ返事で「いく行く!」と答えました。その時の相手方の顔を想像すると今も胸の奥が痛む思いです。

 ここからが小学校の顔見知り会へ移動したときのお話です。それは小さい居酒屋で行われていました。私は出来る限り当たり障りのない席を陣取ろうと企てましたが私は遅れて行ったのでそれは叶いませんでした。しょうがなく残り僅かの空いている席に何気なく腰をかけるとその正面に居たのは髪が茶色に染まったいくつかの女性だったのです。私は直ぐに気を持ち直し当たり障りのない会話で場を作っていこうと思いました。「今何しているん?」から始まる堂々巡りの会話を繰り広げようとしたのです。私はお得意の自虐や赤裸々トークで相手に笑ってもらおうと必死に会話をしました。今回ばかりは同窓会で披露したような労働ではありません。私は大学に進学したが特に将来への大望はなくモラトリアムを楽しんでいる最中だという趣旨の発言をしました。だがおかしいのです。彼女はへーそうなんだという極めてニュートラルな返事しかしないではありませんか。私はツッコミまたは同調が欲しいのです。そして女は他の席へと消えました。

 私はその時ふと我に帰って考えました。その思考の結果を申しますと女は何も悪くありません。その女は美容師志望の専門学生でした。私のようなアニメやライトノベル、ブログ、ポルノ、数少ない捻くれた友人に心を溺れさせてきた人生と恐らくキラキラ光る黄金の水溶液に浸かってきた人生とでは全くもって構築された世界観が違うのでしょう。私の自虐を心から哀れんだことと思います。ちなみに女はその後他の顔見知りのもとで談笑をしていました。それは私にこれからは本やkidle paper whiteを焼き捨ててインカレサークルやモンストなどのソシャゲやセレクトショップ巡りに勤しむこと促すメッセージであったのです。

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