ブログ論

 僕はブログをやっているわけだけれどもなんでやっているのかと聞かれると非常に困る。それが僕に必要だから以上の具体的な答えを僕は用意することができない。

 

 僕がブログを初めて書いたのは小学校五年生のときのことで家族共有のPCでアメーバブログのアカウントを作って~くんとカードゲームで遊んだ時のはなしとかをよく書いていた。今からするとよりSNS的というか身内に向けて書いていた節があるが当時から僕はブログというものを並々ならぬ輝かしい思いで書いていたのを覚えている。僕は幼少期から感情を全面に出すのがとても苦手であった。運動会のときも自分の組である紅組が勝つことを誰よりも祈っていたのに誰よりも無表情で結果の発表を静観していた。そういう心理と身体のギャップに戸惑いながらも運動会後の作文では必死で全員リレーの一コマ一コマ、自分の想いを載せてクラスの誰よりも長い文量で文章を書いていた。そんな僕が感情表現の手段として選んだのがブログだった。中学校に上がってもなお僕は度々ブログを書いていた。休み時間にやった校内での鬼ごっこの緊張、家族で行った上野のアメ横の興奮など今より遥かに稚拙な文章であったのは確かだけど僕はブログへの記述を通してそのような感情を今でも鮮明に覚えている。

 

 しかし僕はいつしかブログを書くことをやめてしまった。それは中学二年生の夏休み前の出来事であった。僕にはクラスで仲良かった人間がいた。その人はクラスの中心人物で感情表現が豊かですごいおしゃべりな性格だった。まるで僕と正反対だ。その人が僕のブログを読んだらしかった。彼はニヤニヤしながら教室で僕に近づいてきて「ブログの~って別人みたいに違うよね」と僕を嘲笑った。真意は分からないが少なくとも僕はバカにされたと思った。僕は凄く恥ずかしくなった。感情表現をブログに任せていた一三年間が急に馬鹿げたものに感じられた。感情表現が豊かなあの人からしたらブログで想いを書くなんて馬鹿げたことだったらしい。僕は十三歳というとってもナイーブな時期にいてクラスの中心人物からのそういった笑いに耐えることが出来なかった。その日以降僕はブログを書かなくなった。その日からリアルでの感情表現を頑張ろうと尽力したがその行動は結局僕を傷つけて致命傷を与えてしまった。その日から再びブログを書き始める大学一年生の夏休みまでの間の約六年間は実に空虚な日々を過ごし傷心を重ねることになった。あの日僕が他者からの批判によってブログを書くことやめてしまったことは僕の人生の中で最も愚かな行いだったと思う。そのおかげで僕は苦手なリアルでの感情表現だけに終始しなければいけなかったのだから。

 

 しかしあのよく晴れた初夏の日に一三歳の少年が下した自らの感情表現の場を絶つという苦しくてたまらなかったであろうあの勇気ある決断を今の僕が一概に否定するべきではないと思う。あのようにしなければ彼は別の意味で傷ついていただろうしそれはそれで苦しい想いをしていたに違いない。なんにしても傷ついていたのだ。自分の感情の表現を採るかクラスでの体裁を採るか選ばなければ行けなかった。それは感情表現を全面に出せないという星の下に生まれた人間の宿命のように思われる。今の僕は彼があれだけ傷付きながら過ごした六年間から決して目を逸らすべきじゃないし、あの六年間の傷が僕に与えてくれたものを捜索していなければいけない。

 

 今の僕は未だナイーブで非常に傷つきやすい少年の影を追っている。こういう風にしている内はずっと少年のまま抜け出せないのかも知れない。しかし僕はブログを書くことをやめはしない。僕の身の回りにはリアルでの僕とブログでの僕との違いに一々目くじらたてるような人はいないし僕のことをそういう人間として受け入れてくれている。僕はそういう人間関係に感謝しなければいけない。僕があの少年と決別するためにやらなければならないのは感情を全面に出すことだ。このことからは逃げられない。僕は一三歳のときにそれをやろうとして失敗しているがそのときはブログを捨ててしまった。何も退路絶って背水の陣で望む必要などなかったのだ。今の僕にはブログがある。さらにはそれをある程度許容してくれる人間関係まである。無理に感情表現をしようとして失敗したらそれをブログに書いて笑ってあげればいいのだ。嘲笑とは違った笑いで。僕は今なら何度だって失敗できる。失敗してナイーブな僕が傷ついても致命傷にはならない。そんな気がしているのだ。

 

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