シュークリームが好きである

    私にとってシュークリームとは他のスイーツとは一線を画す存在である。シュークリームとはシュー生地というへなちょこな生地の中にクリームをありったけ詰め込んだ甘味である。シュークリームの本質は中のクリームにある。あの甘い脂肪の塊が旨いのだ。決してシュー生地は旨くない。こんなことを言うとお前はシュークリームではなくクリームが好きなのではと疑問に思う人もいるかも知れない。しかしそうではない。シュー生地はシュークリームに必要なものだ。あのへなちょこな生地があるからこそ私の手にクリームがベタベタと付かずに済む。クリームの容れ物としてシュー生地は存在している。シュー生地はそのへなちょこさ故にクリームの味を妨害しない。

 

  類似のスイーツにエクレアというものがある。だがあれは駄目だ。エクレアにはシュー生地にチョコレイトがかかっている。つまりシュー生地を美味しく食べようとしている。何故サブのシュー生地を美味しく食べようとするのか。あんなに美味しいクリームを差し置いてシュー生地とチョコレイトが目立つ。私はそれを看過出来ない。さらにはチョコレイトが手にベタベタくっつく恐れもある。エクレアというものはシュークリームが成し得ていたクリームのパッケージングという美学を尽く破壊する最低な甘味なのだ。

 

  シュークリームは一種の謙虚さを感じさせるのもまた良い。世間を意識し謙虚さを美徳とする日本人に実に合ったスイーツだ。ショートケーキだとかああいう派手なスイーツはクリームやら果物やらを前面に見せたがる。それに比べてシュークリームは本質を中に閉じ込めお世辞にも綺麗とは言えない皺々の生地を前面に出す。能ある鷹は爪を隠すというがこれは正にシュークリームのことなのではないかと私は思う。能ある甘味はクリームを隠すと言った按配である。あんな岩石みたいな見た目の物体に甘く蕩けるようなクリームが内包されているなんて誰が思うだろうか。余談にはなるが私もまた仏頂面で日々過ごしながらも甘い妄想ばかりする男である。だからシュークリームとは非常に馬が合う。私にとってシュークリームとは愛して止まない甘味であると同時に人生論なのだ。

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