どうしようもない男の弁論

 

 これの続きです。あ、めちゃくちゃフィクションです。

kuma2909.hatenablog.com

 

「僕と付き合ってくれないか」

 それが僕が彼女に向けた愛の言葉だった。彼女は返事を濁した。そして紆余曲折あったが結論としては振られてしまった。僕は大分後悔をしている。あの日お酒での酔いと歓楽街の雰囲気、そして彼女が放った言葉の含みを持ってして一夜にして一気に距離を縮めようとしたのである。彼女もお酒に酔っていたし、歓楽街にも魅せられてたはずである。ここにただ一つの失敗を上げるとすれば私が彼女の言葉に含まれるあらゆる要素を誤解してしまったことである。というか最初から彼女の言葉にただ一つの要素なども含まれていなかったのだ。今さらこんなことを言っても仕方ないのだが僕はこうやって自分を慰めずにはいられない。

 

 僕はなぜ振られてしまったのだろうか。僕は彼女のことを誰よりも深く真剣に考えている自信があった。膨大な時間彼女の言葉について考えていた気がする。時給換算したら一体いくらになるのだろう。そうだ僕は何百時間も彼女のことを考えその度に苦しい思いをしてきたんだ。時給を貰ってもいいはずだ。いや無給でもいい。無給こそがいいから代わりに君からの愛の言葉がほしい、すっごい深淵なやつを、偶には淫らな要素を織り交ぜてくれるとなお助かる。

 

 彼女に恋をしたのが去年のの5月7日のことで今日は5月5日だから363日彼女のことを好きだったことになる。僕はいつも一人でいる冴えない男だから自然と物事を考える時間は多くなる。だから沢山彼女のことを考えた。一日3時間彼女のことを考えていたとすれば1089時間も無賃労働に勤しんでいたことになる。僕が主に働いていた場所は都内の四畳半のアパートだ。だから東京の最低賃金で計算すると1072665円になる。鹿児島の最低賃金で計算しても828729円だ。僕はバイトが嫌いであまり働かない。だから彼女と行くのは大抵やっすい大衆居酒屋チェーン店だし彼女に何かを奢ったことすらないけどその分一年で80万円分以上の時間を彼女に費やしたのだ。こんなに誠実で切実なのにどうして理解してくれないのだろう。君は明晰だから

「愛はお金じゃない」

なんて言うかもしれない。だけどそれを知っているから僕はその分時間を捧げたんだ。君はそんなこと知らないだろうから。

「お金と時間のバランスが大事なの」

とシラけた顔で言うかもしれない。そんなことを言われたら僕はバイトの日数を増やすしかない。あぁ何故仮想の彼女と議論をしているんだ。これが彼女について千時間以上考えたことの弊害とでもいうのか。僕はいつしか僕の中の彼女とばっかり話していたんだろうか。いえい馬鹿を言え、昨夜も名一杯本物の彼女と話していたじゃないか。馬鹿なことを考えるのは止めておこう。

 

 本件のもっとも酷い点は、僕が労力を賭けて損害しか手にできなかった点である。僕は先述の通り彼女に80万円に相当する労力をかけた。その過程でも随分苦しんだ。だが彼女に告白した後振られてしまった。僕は凄くシャイだから今後、思いを吐露してしまった彼女に対して以前となんら変わらぬ様相で関わっていくのは恐らく不可能である。とんでもなくぎこちなくなるんだろう。友達としての彼女すら、もはや決壊寸前なのだ。僕は80万円かけて一人の仮想の恋人を失いまた一人の大切な友人を失ったのだ。残ったのは愛に関する教訓めいたなにかと恋をしたというそういった経験だけである。僕自信が招いたことではあるのだがとんだ災難だ。こうして得たものが何か今後に役立つのかは全然分からないし役立てたくもないというのが傷心しきった僕が唯一思うことである。

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