僕だけがいない街とは
ヤングエースで連載されていた三部けい先生の漫画作品。またそれを原作とする小説、アニメ、実写映画。タイムリープ能力を持つ主人公が、過去に行って自分と周囲の人々を襲う悲劇を回避するサスペンス物語。
まぁようするにタイムリープものですね。タイムリープものっていうのはありふれたものなんですけど、主人公の心境の描写の細かさだとかタイムリープ先の少年時代のノスタルジックな感じがサスペンスをより盛り上げていてとても面白い物語になっています。
僕はこの作品が大好きです。もちろんこのストーリーが魅力的というのもあるのですが、一番はこの作品がNTR(ネトラレ)の絶望の素晴らしさを教えてくれたというところにあります。
※ここから先多少のネタバレがあります
本作品におけるNTR
この作品のストーリーの主軸は主人公藤沼悟が本作品のヒロイン(?)である小学生時代に殺害されたクラスメイト雛月加代をタイムリープにより試行錯誤して救うことです。物語の初めに悟の母親が殺害されます。悟は日頃のから何か不都合なことが起こるとその起こる前にタイムリープ(本作品でいうリバイバル)してしまう特異体質です。母親が殺害されたときも例に漏れずタイムリープします。いつもなら数分まえにタイムリープするのですが2006年の東京で暮らす悟は1988年の地元北海道にタイムリープします。悟は母親の殺害が15年前の北海道で起きた連続殺人事件の犯人と同じ人物だということを察します。ここから1連続殺人事件を巡る悟の奮闘が始まります。
雛月加代は家で虐待を受けており、さらに学校でも孤立気味の女の子です。彼女は15年前の事件の被害者となりました。この周囲から距離を置いていたことが殺害の対象に選ばれた理由と考えた悟は二度目の小学校生活で加代との距離を縮めようと尽力します。徐々に加代は悟に心を開き始め・・物語中盤で
こんな感じになります。序盤あんなに無口で悟のことを避けていたのにすっかり信頼しきって笑顔を見せ、こんな感じに肩を寄せ合うんです。親公認の恋人みたいな感じになります。このへんで僕たち視聴者は雛月加代にメロメロになります。
で、なんだかんだあって悟は犯人を突き止め加代の殺害を阻止することに成功します。しかし悟は犯人との攻防で意識を失い植物状態に・・・・。
悟が目を覚ますのは15年後、つまりタイムリープする前の元の年齢になっています。そこには涙を流す母親や一緒に事件を解決まで導いた同級生の姿が。実に感動的な場面です。視聴者は思うわけです。「加代はどうした、早く加代に合わせろ」と。しかしご安心ください加代はすぐにやってきます。悟の回復を心から喜んで。
「あっ(察し」
加代は子供を抱えています。視聴者は現実を受け止められません。「頼むから他人の子供であってくれ」「頼むから植物状態の悟から採取した精子で人工授精した子供であってくれ」と祈ります。結論から言うとこの子供は本来の世界線で加代と共に殺されるはずだった同級生のヒロミとの子供です。
主人公悟は加代のために尽力して結果15年もの間眠りにつき、人生の青春の時間を棒に振るうことなったのにもかかわらず加代は植物状態の悟を見捨てて他の男とくっついたのです。一応加代にも道理はあるのですが、加代にひたすら入れ込んでいた視聴者は相当ショックを受けたことでしょう。この手のNTRはよくある話なのですがここまで加代をヒロインとしてまくし立てておいておきながらこの扱いはいくらなんでも酷すぎます。
※ちなみその後悟には元の時間軸で知り合った正ヒロインが出来ます。悟が不幸で終わることはないのでご安心を。
NTRへの目覚め
この作品のアニメ放送当時僕は高校生でした。第3話まで見たところでドハマリして原作漫画を買い揃えました。アニメと同時に読み進めていました。そして来る第11話、子供を抱えた加代がやって来ます。当時NTR耐性のNの字も持っていなかった僕はその光景に絶望しました。一週間ほど心底落ち込みました。加代の結婚相手であるヒロミに死ぬほど嫉妬します。アニメの登場人物に嫉妬するなんて初めてのことだったので気でも狂ったのかと自分を疑いました。しかし同時にこういう複雑なもやもやが苦しいながらも心地良いと感じるようになりました。以降成人向け作品でNTRというジャンルを見漁ったのは言うまでもありません。NTRは実に高尚な助平です。僕にNTRの素晴らしさを教えてくれた「僕だけがいない街」という作品に感謝しかありません。
想いを踏みにじられて興奮する原理は未だに不明ですが過去にNTRの素晴らしさについて書いた記事があるのでよろしければこちらもどうぞ