楽しくない氏はモテない男である。モテない男の周りにモテない男が集まり役に立たない猥褻談義をするのが彼の常であった。しかし最近になって彼の友人が引き続きに彼女を獲得している。彼の平和な猥褻な日常が壊れつつあるのだ。彼は友人である元モテない男と美味しい二郎インスパイアラーメンの店で落ち合った。本記事はその時の記述である。
楽しくない氏のその友人は恋人が出来てから非常に生き生きとしていた。彼の友人はラーメン屋にて楽しくない氏にとても赤裸々な話をした。それはむせ返るような甘い話であり、その甘さは楽しくない氏を胸焼けさせた。詳細は甘い友人の名誉の為に伏せておくがピュアな楽しくない氏からすればかなり不浄な話であった。彼のメンタルはボロボロになった。彼は半年もの間ある女性に好意を寄せとんでもなく長い迂回路のような恋路をひたすらに蛇行している。それは苦行そのものであり乙女の一挙手一投足に一喜一憂する生活が彼の精神をすり減らしていた。それとは対照的に彼の友人はとても楽しいことをしていたのだ。しかも友人は出会って2ヶ月弱で今の彼女と交際を始めたらしい、それも向こうからの猛アピールを受けて。楽しくない氏は友人からの甘い話を聞いて、「楽しそうで何より」と朗らかな表情で言ってみせる。しかしこの男の内心は決して穏やかではなく、家に帰ったらきっと自身の迂回路と友人のまっすぐな順路を比較して落ち込むことだろう。きっと回り道の方が楽しいに違いないと自分に言い聞かせるしかないのである。
