楽しくない氏、生まれて初めて女性に向けて銃を撃つ

  これは今から3年前の出来事である。楽しくない氏は高校3年生だった。彼は以前から女性を射殺することに憧れていた。多くの男子高校生がそうするように彼も女性の心臓を撃ち抜いて瞬殺してみたいという願望を抱えていた。しかし折角女性を射殺するからには死角からの暗殺ではなんだか味気がない。生憎彼の学校での生活で暗殺の範疇を超える射殺が出来る関係性の女性なぞ居なかったし、クラスメイトの女性は同じくクラスメイトの男に次々に急所を射抜かれしまっているせいでそもそもクラスに女性が居なかった。そこで楽しくない氏はインターネットで射殺相手を探すことにした。すると案外すんなりと撃つことができそうな女性が見つかった。

 

 インターネット上で会話すること1ヶ月、彼は分倍河原駅にてその女性と落ち合った。そこは双方にとってアクセスのし易い場所であった。時刻は17時30分で辺りは薄暗くなっていた。その女性は彼より25cm程身長が低くて防弾チョッキ等の防具すらも身に付けず、全身を若者向けの安っぽい洋服で着飾った女だった。楽しくない氏は本当に自分が女性を射殺できるかどうか不安だったがその体格差と彼女の無防備さを見て安心した。彼は本当だったら今すぐにでもこの分倍河原駅JR改札前で彼女の心臓を撃ち抜いてやりたい気分であった。しかしこんなところで発砲なぞしたら人に見られるし、そもそも射殺を見せびらかす趣味は彼にはなかった。彼らはその足で近くの人気のない公園まで行った。そこまで誘ったのは女の方だった。楽しくない氏はこの女も女で撃たれたがっているのだろうと思った。公園には本当に全く人が居なかった。楽しくない氏は彼女を安心させるために1時間程意味のない話をした。彼女はあまり笑わなかった。あたりはすっかり暗くなっていた。人殺しにはもってこいの状況である。会話がなくなり、無言が数分間続いた。すると彼女が口を開いた。「ねぇ撃ってよ。」と言う。楽しくない氏は嬉しくなった。このときになると彼は撃ち殺したくて仕方なくなっていた。彼女もその気だったのだ。そうなってしまえば彼にとって発砲を躊躇う理由なんて一つもなかった。楽しくない氏は右手にずっと持っていた銃を彼女に向けて引き金を引いた。何度も引いた。生まれて初めての発砲の感触は思っていたものと違った。こういうものはもっと情緒的で感動があるものだと思っていたが彼にとって特別なものなど一つもなかった。女性は座っていたベンチに倒れていた。楽しくない氏はその光景を見て感触はさておき、撃ち抜けたことへの達成感に浸った。まぁまぁの充足感だった。しかし数分も経つと女性は起き上がっていた。「満足した?」と彼女が言う。楽しくない氏は動揺した。彼女は死んだフリをしていただけだったのだ。楽しくない氏が手元を確認すると銃には銃弾が入っていなかったし発砲した痕跡もない。彼は空砲を撃っていただけだったのだ。彼女はそれを嘲笑い、銃殺ごっこに付き合っていただけだったということを彼は知る。楽しくない氏は恥ずかしくなり、逃げ出すようにその公園を後にした。彼はまだ射殺を諦めていない。

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