君はソメイヨシノなんか見ずに銀杏だけを見てれば良い

  つい二週間前まで黄色く色付いた葉っぱを纏って殆どの学生を見上げさせていた大学にある銀杏の木が今はそれを殆ど散らしてしまい地面の葉はゴミ屑と同様の扱いを受けている。こんなつまらない観測をする僕にしか見上げられていないのはどことなく不憫である。春のソメイヨシノのだって盛大に開花して学生の視線を集めて散るときはゴミみたいになる点では同じだけどあいつは直ぐにみんなの注目を受けて瞬く間に消えていく。あいつは散り際も惜しまれるんだ。だから僕はソメイヨシノを不憫だとは思わない。ソメイヨシノと僕は境遇が違う。それに比べて銀杏の葉は不憫だ、彼からすればそんな同情など要らないのだろうけど僕はそう思わずにはいられない。彼は半年の間、青いままの葉を纏っているけど誰にも見向きもされない。彼が色褪せてくると徐々に学生から見上げられて脚光を浴びる。それもつかの間、綺麗に色付いた葉を散らすことになる。そして誰に惜しまれることもなくゴミ屑となる。冬になったら植物が散り行くのは自然な流れだから。僕はそんな彼が不憫で仕方ない。

  僕にもしガールフレンドがいて観に行くのならやっぱりソメイヨシノではなく銀杏を選ぶ。それも紅葉したものではなくて、うんと青いヤツを観に行きたい。僕と彼女は銀杏の木の下を歩きながらくだらない話をする。そして秋に色付くはずの銀杏の話をして彼女の視線をまだまだ青い葉に誘導する。秋になったら綺麗な銀杏の葉を観に行こうと言って彼女を数ヶ月先のデートに誘う。もしかしたら彼女は春にも桜を観たいと言うかもしれない。彼女は彼女で僕をデートに誘ってくれるかもしれない。だけど僕はそれを断ると思う。だって恍惚とした表情でソメイヨシノを見上げる彼女を見ていられる気がしない。ソメイヨシノと僕は境遇が違う。君はまだまだ青い銀杏の葉が秋には色付いて壮大な光景を見せてくれることだけを考えながら大学に通えば良い。ソメイヨシノなんてくだらないヤツなのだから

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