リアリティクリスマス

クリスマス付近になると決まってこういう会話が起こる。

 

「ケンタ君はクリスマスとか予定あんの?」

社員の落合さんが話しかけてくる。僕はクリスマス付近にバイトのシフトを入れなかった。

「まぁ、ありますよ。」

「なになに〜、もしかしてデート?」

「別に良いじゃないですか。」

と素っ気ない返事。

「なにーおじさんにも教えてよ。」

「だから別にいいじゃないっすか。」

「ケンタ君だけにケンタッキー食べないの?」

「ハハ、食べないっすよ。」

この愛想笑いは僕の特技だ。

「へー、彼女居るんでしょ?」

「まぁ。居ますけど…」

「はーいいねー。青春だね〜。今楽しいでしょ?今しか出来ないからねー。」

 

おじさんはこうやって若者の恋愛を知るや否や、ニヤニヤしながら楽しんでいることを類推してくる。落合さんにとっては過ぎ去った思い出だからいくらでもいい感じの回想をする事が出来る。

だけど現在進行形の「青春だね〜」をしている僕は情動同士のぶつかり合いたる恋愛の醜悪をリアリティを持って感じている。だから落合さんみたいなリアリティのないニヤニヤには腹が立って仕方がない。笑ったときに落合さんの目の横に出来るシワがまるでマジックペンで描いただけのもののような気がしてきた。その目やまつ毛や唇は本物か?のっぺらぼうになってしまった落合さんに何を言ってもリアリティは戻ってこない。

 

「ハハ、なんだかんだ言ってまぁ楽しいですよ。」

「青春だね〜。」

落合さんは平面世界に閉じ込められている。

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