都落ち士の初めての帰省

特急ときわ82号 7号車13 A 

特急券を買った。

足を何度も組み直しながら、ずっと窓の外を眺めている。水戸発東京行。僕は水戸のことをミトランティスと呼んでいる。だからなのかは知らないけどそこに住んでいるのに、水戸のことを実在が怪しいふわふわした都市だと思っている。いうならば都市伝説上の都市ってところだろうか。いやそれもややこしいな。

 

にしてもミトランティスと東京が電車一本で繋がっているなんて不思議だ。あと学生時代には縁もゆかりもなかったこの特急という乗り物に乗っているのも不思議だ。架空の都市ミトランティスと身近な東京。ここには大きな隔たりがある。だけれども特急で1時間もボーッとしてればもう見慣れた街になっている。

 

まもなく東京に到着します。

 

そう。あっという間に。一瞬で現実に引き戻される。舞浜から地元の最寄り駅に帰ってきたときのような既視感を感じる。本来なら職場のあるミトランティスに現実感を感じるべきだとも思うのだけれど、僕にとってはあそこは夢の国の亜種みたいなものだ。まぁもちろん悪夢の類ではある。

 

僕はいわば東京に生まれながら、地方に行くという都落ちをしたわけである。こういう状態になると、ガチャガチャした東京も一丁前にノスタルジーを醸し出してくることに気付いた。駅前にあったオードリーの春日が映るデジタルサイネージ、なんで僕はこんなもので郷愁しているんだろう。普通さ…ノスタルジーって夕暮れの商店街とかを見て感じるもんじゃないのか。都落ち士の僕にはセピア色の商店街ではなくてセピア色の春日が出迎えてくれた。もっと良い感じのシーンで郷愁(イキ)たかった。そう切に思う。ミトランティスの住人に戻るまでにどんな郷愁(イキ)方が出来るのだろうか。いろんなシーンが考えられるが、手始めに実家を試してやろうと思う。

 

 

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