楽しくない氏は苦悶の表情を浮かべて寝ている。彼は頭が悪かった。それも勉学が捗らないとかそういう類の頭の悪さではないのがタチが悪い。楽しくない氏は本日の活動を持ってして自分の地頭の悪さを実感したとともに自分の地頭に対する過大評価とのギャップに慄くのである。
彼はゼミでのプレゼンに意気込んでいた。それは自身の地頭を程度を履き違えていたからである。結果としては最悪だった。説明で使った難しい概念と言葉が自分の中で結びついていなかったのである。話し手、聞き手の双方がなにも理解していないという地獄の8分間を作り出してしまった。彼のあたまの悪さを顧みればプレゼンなんかに意気込むべきではなかったのだ。
こんなことがあったからか楽しくない氏が今夜見る夢は悪夢である。それは意中の女性に自身の腿肉を喰われる夢であるかもしれない。あるいは意中の女性が自身の亡ガラで出汁をとったラーメンをすする夢であったかもしれない。いずれにせよ彼女が彼のことをカニバリズムの対象に選んでくれたことは実に喜ばしいことであり一概に悪夢とはいえない。彼の苦悶の表情はなにを意味するのか、ゼミのプレゼンと意中の女性の繋がり、彼には食人趣味があるのか、謎は深まるばかりである。