私は、人との距離感のとり方が極端に苦手である。例えば母親の友人が居て幼いころ可愛がって貰っていたとしよう。それから5年ほど経ちその間に私は思春期を迎える。そして久しぶりに合ったその人に喋りかける言葉が見つからないのだ。相手からしたら可愛い友人の息子である。当然慣れ親しみたいところであろう。しかし私はその間に大人になって目上の人を敬うことを知ってしまった。私は頑張って、可愛い子どものようにタメ口を使うがどうもぎこちない。あの頃のような純粋無垢な感じで喋れないのだ。いっそのこと敬語で喋った方がスラスラと喋れると思うのだが、向こうはショックを受けることだろう。相手の動揺を想像すると敬語でもスラスラ喋れる気がしない。
なぜ日本語は敬語とタメ口を使い分けなければいけないように出来ているのだろうか。英語圏に生まれていればきっとこんなことも考えなくて良かったはずである。出来ればフォーマルとインフォーマルの間の言葉が欲しい。私は距離感を極端に遠ざける言葉と極端に近づける言葉の2つしか持っていない。中途半端な距離に居る人と喋ると非常にぎくしゃくする。両親との会話もなんだか最近上手くいかない。私は21歳なので両親にべったりという時期はとうに過ぎている。だから幼少期のときの言葉は使わない。しかし両親はいつまで経っても私を可愛い息子として扱う。私が大人ぶったことを喋ろうとも対等に向き合わない。だからどっち付かずな感じになりリビングで黙る。そして私のことを「物静か」と評価する。言葉の距離感を自由自在に出来たらどれ程楽だろうか。バイト先の店長にも過度に敬い過ぎず、両親にも対等に発言出来る。私が必要とするコミュニケーション能力はそういうものだと思う。