最近両親の様子がおかしい。まず最初に異変を感じたのは小学生の妹の遥香が22時を超えても帰って来なかったときだ。妹はいつも学校を終えて遅くても16時には帰ってくる。そんな妹が帰ってこない。なのに母や父は普段と変わらずにテレビを見ている。なぜそんなに平然としていられるのだろうか。僕は無言で遥香を探しに外に出た。夜明けまで探したが結局見つからなかった。そして家に帰ると母が台所に立っていた。父は食パンを食べながらテレビを見ている。
「どこ行ってたの?」少し苛立ちながら母が言う。
「遥香帰ってきた?」
「何言ってんの?遥香は事故で死んだでしょ?大丈夫?」
呆れてしまった。母は遥香のことを心配しているどころか、死んだと思っている。
「健太。そういう冗談はやめろ。」父が言う。
父まで死んだと思っている。妹が帰ってこないパニックでおかしくなってしまったのだろうか。
「二人ともおかしいよ。遥香きっと誘拐されたんだよ。警察には行ってないの?これヤバいって。」
「いい加減にしろ。」と父が怒鳴る。
「もういい。俺が通報するから。」リビングにある固定電話まで駆け寄る。
「おい。」父は駆け寄ってきて僕のことを殴る。
どうやら本気で自分の娘が死んでしまったと信じているらしかった。パニックなのは分かるけどそんなのあんまりじゃないか。二人共認知症に陥ってしまったのだろうか?結局1週間経った今でも妹は帰ってこない。僕はこの先妹の捜索を続けなければいけない。だけどそれに加えて頭がイカれた両親の介護も行わなければならない。両親の症状は悪化する一方だ。先日も焼き魚をおかずに白飯を食べていた。マーガリンも塗らないで...。ここまで短期間で認知症が悪化する両親を見て僕は悲しくなる。この家でまともなのは僕だけ。待ってろよ遥香、僕が今助けるから。