憧れに憧れるミノルくん

 私が高校1年のとき、クラスが一緒だったミノル君という男の子と仲が良かった。彼は陸上部に入っていて、その成績も中々のものだった(らしい)。ミノル君は器用だった。何が器用かというとクラスでの立ち回りが上手だった。私みたいなクラスの除け者的存在と仲良くしながらもクラスの自己主張が激しい人間とも上手いことやっていた。仲間内でしかはしゃげない私とは大違いであった。自分で言うのも何だが、僕はその仲間内では面白人間として扱われていた。よくボケていた。ミノル君はそんな私に良い塩梅に棘のある指摘をして場を盛り上げてくれていた。

 仲間内での面白キャラだったがそれは今となってはとても良い思い出である。しかし当時はミノル君とは違って器用じゃない自分自身に自己嫌悪しながら面白おかしくしていた。

 ある日体育で柔道の授業が始まった。体育教師から皆それぞれ買わされた柔道着を手渡された。そして道着に名前を書くように指示される。ミノル君と適当なことを喋りながら名前を書いていると、「俺もそんな風になりたいわ〜」と私の道着に書かれた名前を指さした。一瞬何を言っているのか戸惑ったが、それは私の乱雑に躊躇なさげにデカデカと書かれた名前を指していた。彼が言うにそうやって躊躇なく大胆に行動出来るのが羨ましいとのことだった。そりゃ羨ましいだろと思った。私だってそういう大胆さに憧れてそういう態度を取っているのだ。私は元来、何事も慎重になってしまう小さい人間なのだ。

 憧れに憧れているミノル君。日常ではこういう中身のない羨望に溢れているのではないかと思う。だから周りの人間が良く見えたってなんも気にしないもんね。

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