音楽を聴けるようなるまで②

「お前、もっとEXILEとかカッコいいの聴いたほうがいいよ。」

そんな掛け声と共に僕の音楽暗黒期が始まった。今思えば聴く音楽を強制されるのは人権侵害だということが分かる。しかし当時の僕は、EXILEこそが真のイケてる音楽なのかと不良を信用した。だから、不良の兄貴(つまりそいつも不良)がWALKMANに入れたEXILEを羨望を込めて聴いてみたのだ。

頑張って一つのアルバムを全て聴いた。そして「カッコいい音楽」を好きになるために日常的にそれらを流した。そして3ヶ月程経ったある日に僕はどう頑張ってもEXILEの曲が好きになれないことを悟ったのである。それからの日々は非常に辛かった。表向きは「カッコいいEXILE」が好きな演技をして、家に戻ったらボーカロイドやアニメソングを聴く。ここでも「カッコいいEXILE」とアンチ的な「ダサいアニソン」という構図が生まれてしまった。この頃になると音楽はイケてる奴らのためのものなのだという意識がより顕在化した。

 

 2017年の春、音楽をまともに聴くことも出来ないまま僕は高校生になった。この頃になると中学の不良たちとは疎遠になっていた。そしていつのまにかWALKMANからは「カッコいい音楽」は削除される。中学のときの反省から僕は無理にイケてる奴らに気に入られようとするのをやめた。その結果僕はクラスで孤立した。クラスに1人はいる休み時間机に突っ伏す奴。それになった。外界との遮断と1人でも楽しんでますよというアピールのためにWALKMANに繋がったイヤホンを耳に入れる。音楽はそういうツールになった。

 ただ音楽を聴くという面では悪いことばかりでは無かった。クラスでは孤立したけど高校で入ったテニス部で、アニメソングやらをアンチ的ではなくて普通に楽しんでいる人たちと仲良くなった。暗黒期の不良らに比べれば、幾分も文化的に近い友人だ。だから彼らが薦める音楽は自然と馴染むことが出来た。この時に初めてアンチ的ではない音楽を知ったのである。彼らと一緒に、BUMP OF CHICKENとかRADWIMPSといった2010年代の若者なら誰でも通るアーティストを通った。アンチ的ではなくて。アニメソング×ロックバンドというのがこの時の好みだった。ダサいことがコンプレスックスの男子高校生でも受け入れやすく、程よくカッコ付けられる。心から「俺はカッコいい音楽を聴いてるぜ」と思えた。

「イケてる奴らのための流行りの曲」と「僕らみたいな奴のためのアニメソング」そんな凝り固まった二項対立から解放された時期であった。ただ今度は逆に身内で流行っているから、その音楽を聞いてみるという、これまた狭い音楽観になってしまったことも否めない。

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