「楽しくない君、ちょっと動かないで。」
そんなことを言いながらおもむろに女が僕の髪を触り出す。そして一本の色素異常を起こした髪の毛を選び取り、それを引っこ抜く。頭皮にはチクッと針を刺されたような感覚が回る。僕には白髪が多い。こういうやり取りがある度に心底うんざりする。それと一緒にちょっとだけ興奮をする。人の髪をいきなり触りだすクレイジーガール。クレガに僕は抜かれる。抜いてなんて頼んだ覚えはないけども、強引に抜いてくる。それは比喩的な痴女性が垣間見える瞬間である。
僕の感じる変な形態の趣向を言語化してみたのだけれど、我ながら凄く気持ち悪いと思う。僕にとって女性に「白髪抜いてよ」と頼む行為はセクシャルハラスメントなのだ。向こうはこっちの意図に気づくことも無いから訴えられはしないけども。でもこういう特殊な興奮って誰しも持っているものだと思う。そんなことないよ!というそこの貴方もきっと何かしらそういうものがある。それを見つけて言語化してしまったらもう取り返しのつかないことになので気を付けて欲しい。僕は今後白髪を抜かれる度に罪の意識に苛まれることになるだろう。