渋谷

 久しぶりに渋谷区に来た。23時の渋谷で僕のように一人で目的地に向かって出掛けている人はいない。前回は恋人と歩いていたからなんとなくそう感じる。人との用じゃなければこんな街に来ることはないだろうと思っていた。夜の渋谷に歩いているのは、皆それぞれ一定の世界観を纏った人ばかりだ。プラスかマイナスはさておきそれぞれ生き方が定まっているような感がある。色気しかない女なんかがその良い例である。一方僕はどうであろう。アイデンティティというものの欠片もない。そして迷った挙げ句に僕に似合わない街、渋谷に一人で来てしまった。アイデンティティが定まっていないという世界観を纏っていると言えるかもしれないが、カオスを売りにしたような物語がゴミなのと同じで、僕はどうしようもない。

 僕がなぜ渋谷区なんかに来たかというとナイトクラブで遊ぶためである。オールナイトでDJ達が音楽をかけまくるイベントである。僕は、普段随分な硬派気取りだが音楽に身を委ねるのが好きだ。お酒を飲みながら、好きな音楽を聞いて、ただ踊る。とは言ってもチャラいだけのイベントだと気後れしてしまう。だから決まっていつも参加するのはインターネットカルチャー音楽を中心としたイベントである。

 あれだけ、疎外感を感じていた渋谷だったのにライブハウスに入ると真っ先に目に入ったのはメガネをかけて、サイズ感のおかしな半袖シャツを着たオタクが汗だくで踊っているところだっら。DJも、盛り上がるフロアを前に照れくさそうにハンズアップをしている。かかるのは「患部で止まってすぐ溶ける」。僕はそれに合わせてイケてるノリ方を試行錯誤する。持っていたビール缶の炭酸が抜ける。

にほんブログ村 大学生日記ブログ 文系大学生へ
にほんブログ村 jQuery('.icon-hamburger').on('click', function() { if(jQuery('.menu-container .menu').css('display') === 'block') { jQuery('.menu-container .menu').slideUp('1500'); }else { jQuery('.menu-container .menu').slideDown('1500'); } });